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健康経営優良法人認定制度について

健康経営優良法人認定制度について

健康経営という言葉はご存じですか?
労働人口の減少や少子高齢化、医療費の増大などが問題となっている日本社会において、企業が持続的な成長を続けていくための重要な要素として関心が高まっています。
今回は、経済産業省が推進する「健康経営優良法人認定制度」について解説していきたいと思います。

「健康経営優良法人認定制度」とは

経済産業省により、2016年度に創設された制度です。

そもそも「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することを指します。健康経営への関心は年々高まっており、企業によっては独自のユニークな取り組みを進めているところもあるようです。「健康経営優良法人認定制度」によって優良な健康経営に取り組んでいる法人を「見える化」し、従業員や求職者、取引先、金融機関などから社会的な評価を受けることができる環境が整備されています。

「健康経営優良法人2025」としては、大規模法人部門は3,400法人、中小規模法人部門は19,796法人が認定されています。

一方、1番最初の「健康経営優良法人2017」では、大規模法人部門は235法人、中小規模法人部門は95法人が認定されていましたので、健康経営の重要性を認識し、積極的に取り組む企業が大幅に増えていることが明らかです。

健康経営の取り組み例

定期健康診断

労働安全衛生法では、会社には健康診断実施義務や安全配慮義務があるため、従業員に対して健康診断の重要性を説明し受診するように促すことが求められます。受診率100%や、法定以上の検査項目を追加するなどのより手厚い取り組みを掲げている企業が多く見られます。

メンタルヘルス対策

職場の人間関係や、様々なハラスメント、過度な長時間労働などにより、心身の不調を訴える人は増加傾向にあります。対策としては、相談窓口の設置やストレスチェックの実施等が挙げられます。また、上下左右のコミュニケーション活性化による職場環境の改善もメンタルヘルス対策として有効と言えるでしょう。

女性の健康課題への配慮

女性の健康課題は、ライフステージによって変化することが特徴です。月経や妊娠・出産、更年期、婦人科系疾患などの健康課題に配慮した取り組みを行うことで、生産性向上や人材の確保・定着、企業のイメージアップに繋がると考えられます。具体的な取り組みとしては、生理休暇の取得しやすい環境整備や婦人科健診の費用補助などがあります。

認定のメリット

人材の確保・定着

「健康経営優良法人認定制度」に認定されることで、従業員の健康を重視する働きがいのある職場であることをアピールできます。従業員の満足度向上に貢献し、離職率の低下にも繋がると考えられます。また、求人募集時には魅力的な職場と認識され、優秀な人材の確保にも繋がります。

企業イメージの向上

認定されると、健康経営優良法人のロゴをHPや会社案内、名刺等に利用することが出来るため、「従業員の健康を重視する優良な会社」として社会的な信頼や評価が高まります。また、一部の地域では自治体・金融機関による金利優遇措置を受けることが出来ます。

生産性の向上

健康経営優良法人は、一度認定を受けたらそれで終わりではありません。継続的に認定を受けるには、毎年申請する必要があるため、PDCAサイクルを回すことが可能となり、より効果的な従業員の健康増進を実現しやすくなります。従業員の健康が維持・向上することで、業務効率の向上にもつながります。

申請の流れ

スケジュールとしては以下のようになっています。

  • 〇 申請期間:8月下旬~10月中旬頃
  • 〇 認定発表:翌年の3月頃

2026年度のスケジュールはまだ公表されていませんが、例年通りであれば上記のようになる見込みです。


大規模法人部門と中小規模法人部門で申請方法が異なりますが、今回は中小規模法人部門について記載します。また、2026年度の申請方法はまだ公開されていませんので、変更になる可能性があります。

① 加入している保険者(協会けんぽ等)が実施している健康宣言事業への参加

中小規模法人部門では、健康宣言事業への参加が必須となっています。詳細は、加入している保険者に確認しましょう。もしも加入している保険者が健康宣言事業を実施していない場合は、各自治体が実施する健康宣言事業への参加、あるいは自社独自の健康宣言の実施でも代替可能です。

② 新規IDの発行

初めて申請する場合は、新規IDを発行する必要があります。詳細は「ACTION!健康経営」HPをご確認ください。過去に申請したことがある場合は、申請の受付開始時にメールで案内が届くため、IDの発行は不要です。

③ 健康経営優良法人(中小規模法人部門)認定申請書に必要事項を入力、提出

発行したID、パスワードで専用サイトにログインします。そこから認定申請書をダウンロードし、必要事項を入力していきます。項目は多めで、「健康経営の具体的な推進計画」を記入する欄もありますので、多くの時間を要します。計画的に進めましょう。入力が完了したら、期限日までに専用サイトにデータをアップロードします。

④ 申請料の支払い

11月上旬頃に、請求書が届くので支払います。期日までに入金が確認できない場合は申請が行われないのでご注意ください。

⑤ 内定通知

審査が進み、内定した場合は2月下旬頃に内定通知がメールで届きます。

⑥ 認定の発表

無事認定された場合は3月に認定通知がメールで届きます。認定証やロゴもメールで送付されます。

健康経営優良法人の認定は、申請に手間と時間がかかってしまいますが、従業員の健康増進・モチベーションアップにより、生産性の向上、企業イメージの向上等、非常に多くのメリットがあります。早めに計画を立て、じっくりと取り組むことをおすすめいたします。